人生栗色

観たり読んだり考えた記録

劇団鹿殺し『名なしの侍』@サンシャイン劇場

※息をするようにネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

細々と応援している鳥越裕貴くんが劇団鹿殺しの舞台に出演するということで喜び勇んで観に行きました。

鹿殺しさんは気になる劇団ではありながらなかなか観に行く機会がなく、OFFICE SHIKA PRODUCEの『竹林の人々』は拝見したけれども本公演は今回が初観劇。

劇団員の皆さんは何かしらの楽器が出来るという噂を聞いていたし、今回は“怒パンク”と銘打たれているのでどんなもんかと期待して臨みましたが、いやもう圧巻の生演奏!

会場を飲み込む勢いで轟くバンド演奏や吹奏楽に圧倒されて、終演後まで心臓が痛かったです。音楽の力って凄い。

劇中で歌われる曲も、どこかで聞いたことがあるようなキャッチ―な曲ばかりで、2回観劇したらもう脳にこびりついて離れなくなりました。

私は特に『竹千代を盗め』が好きで、直役の菜月チョビさんのハスキーな歌声が胸に沁み、またサビからのダンスが格好良くて可愛くて鳥越ファンとしてもたまりません。

あと、まさか鳥越くんにソロがあるとは思っていなかったので、『カリスマ侍』のラップが始まったときは驚きました。テクノっぽい加工音と声がマッチしていて良かったです。そして唯一元ネタのわかった曲でした(笑)

 

内容は“怒パンク時代劇”と聞く通り、戦国時代を題材にしたお話。生演奏に乗せたド派手な殺陣もあれば、ドラムを歌舞伎のツケに見立てて鳴らす演出などもあり、現代的な音楽と古典的な要素がいい具合に混ざり合ったエンターテインメント舞台でした。

鳥越くんは“ハズレの次郎・当たりの三郎”と呼ばれる兄弟のデキる弟、三郎役。次郎が心で三郎が頭という役割分担の通り、ちょっと狡賢いんだけど憎めない愛らしさのある子。

弟キャラだったら鳥越くんなら可愛く演じられそうだよね~という先入観を持たれる方も多いと思いますが、『絵本合法衢』を経た彼の演技は一味違います。

これまで通りキレのあるダンスや愛嬌たっぷりな振る舞いで楽しませながらも、殺陣から、表情から、立ち居振る舞いから、死にざまから、三郎の生を、人間としての深みを感じてゾクゾクさせられます。特に生き死にが滲み出る殺陣の泥臭さは必見。その表情や呼吸から武者震いが伝わってきて、こちらまで昂奮状態に。

竹千代をお堀に落として自分が竹千代に成り代わった三郎。その最期、竹千代に刺されて今川義元の首を奪われてしまうとき、BGMが『竹千代を盗め』のアレンジ版であることに気付いた瞬間震えました。因果は廻る。

ふたりでひとつの兄弟と言いながらも、三郎は自立したかったように感じました。だけどひとりでいる三郎は暴走しがちで、上手くいかなくて、やっぱり次郎の存在が大切だと気付く。

死に際にうっすら笑みを浮かべたように見えたのは、自嘲も含まれていたのかもしれない。

最初の芋洗い場のようだった道場時代から、少しずつ出世して名前をもらって転身していくさまが鮮やかな、見どころのある役でした。

あと、ものすごーく蛇足だけど、推しの口から「勃起しちゃう」という台詞が聞けるなんて貴重な体験でした(笑)

 

そして主題になっている『名なしの侍』についての好き勝手な深読みなんですが。

信長の名を取り上げられた虎蔵、本当は名前のなかった伝助、名声を得られなかった茂吉という“名なしの侍”たちが、終盤に斬り合いながらあてもなく歩いていくシーンはこの作品の象徴だなと感じました。

ただ自分の居場所を求めるために“名なし”同士で戦って、世間ではお偉い様方が事件を起こしたり時代が動いているけれど“名なし”たちには関与しようもない出来事で、だけどいつの間にかそんな時代の波の巻き添えになり死んでいく。

まるで現代を生きる私たちのようじゃないかと!

勝手に物凄い皮肉と風刺を感じ取って身震いしてしまいました。そうか私たちは何者かになりたいと足掻いて底辺同士で足を引っ張り合ったり依存し合いながら死んでいく名なしの現代人なのだなあ。

まさに有象無象、烏合の衆。名前が残るのはほんの一握りの人間だけという残酷な現実を改めて突き付けられた気分になりました。

そんな中、さっきまで斬り合っていた3人の侍が、合戦に巻き込まれた際に顔を見合わせて紙吹雪舞う中共闘していく場面は、なんだかむしょうに涙が出てしまいました。ここが私の一番印象的なシーンです。

 

エンタメとして手放しで楽しむことができて、更に色々と考えを巡らせてみても面白い、そして勿論鳥越くんの魅力も存分に堪能できる大変満足度の高い舞台でした。観に行けて良かった。

最後になりましたが劇団鹿殺しさん15周年おめでとうございます。これからのご活躍も楽しみにしております。

ぜひまた鳥越くんのこと使ってくださいね!!

 


《舞台予告編》劇団鹿殺し15周年記念・怒パンク時代劇「名なしの侍」